日本の高血圧患者数は約1000万人に上り、もはや国民病と言って差し支えない状態にあります。2019年に策定された最新のガイドラインによれば、高血圧は「正常血圧」「正常高値血圧」「高値血圧」「T度(軽症)高血圧」「U度(中等症)高血圧」「V度(重症)高血圧」に分類されます。
正常血圧は120/80(mmHg、以下同じ)未満で、脳心血管病の発症率が最も低いとされます。正常高値血圧は120/80以上、高値血圧は130/80以上で、いずれも治療を必要としないまでも、血圧に注意が必要な状態と言えます。従来のガイドラインでは130/80以上140/90未満が「正常高値血圧」とされていましたが、様々な研究の結果、これらの層でも脳心血管病の発症率が高くなることが明らかになったため、基準が厳格化されました。
140/90以上が治療対象となる高血圧とされ、T度高血圧は140〜159/90〜99、U度高血圧は160〜179/100〜109、V度高血圧は180/110以上です。ただし、糖尿病患者やタンパク尿がある慢性腎臓病患者、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者は、130/80以上が治療対象となります。
血圧が高い状態が続くと、脳卒中や心臓病を起こしやすくなるので、放置してはいけません。高血圧と診断された場合には、塩分制限などの食事改善や適度な運動を取り入れるといった生活習慣の見直しによって、血圧値を正常範囲に戻すようにします。喫煙やアルコールの大量摂取も高血圧の原因となるため、禁煙や節酒も必要になります。
それでも十分に血圧が下がらない場合に、薬物療法が考慮されます。高血圧の薬物療法ではまず、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬などが単剤で投与されますが、それでは十分な効果が得られない場合に、複数の薬剤を組み合わせる治療が行われます。
なお、40歳未満で高血圧と診断された場合には、何か別の疾患(心疾患や腎疾患、睡眠時無呼吸症候群など)が高血圧の原因となっていることもあるため、よく調べることが必要です。
高血圧の予防は、食事における塩分の摂取制限(1日6g未満)が基本になりますが、カリウムやカルシウムを摂取することも有効です。カリウムは塩分を体外に排出させる役割をし、カルシウムが不足すると、ある種のホルモンが出て血圧を上げる作用があるからです。
嗜好品に関しては、禁煙は当然のこととして、アルコールを控えめにするなどの努力が必要です。運動は、歩行などの有酸素運動を1日30分程度を目安に行うとよいでしょう。
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